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肛門科について
肛門科に対するイメージで「恥ずかしい」「怖い」「痛そう」など悪い印象が先行し、受診をためらい症状が悪化してしまう方が多くみられます。
当院では、おしりのお悩みがあり不安な患者さんが安心・気楽に受診できるような環境・雰囲気づくりを行っております。
肛門疾患は、身近な病気の「痔」だけでなく、肛門周囲膿瘍、肛門ポリープ、便秘症、直腸脱、尖圭コンジローマなど様々な疾患が存在します。
「痔かも?」と自己判断で放置しないためにも一度受診されることをお勧めします。
病気によって治療法は異なりますが、近年では切らずに治療する方法や、できるだけ苦痛のない内視鏡検査など、患者さんの不安に配慮した検査・治療を心がけております。
肛門科でよくみられる症状
おしりのこのような症状、気になりませんか?
- おしりや肛門周りの痛み
- 肛門からの出血や血便
- 肛門のでっぱりや腫れ
- 肛門周りの痒み
- 痔の悩み
- 肛門から何かが飛び出ている
- 排便がしづらい
- 肛門周囲の違和感や残便感
など
上記のように、おしりの症状は幅広く、多くの疾患が考えられます。
放置すると悪化する恐れがありますので、自己判断せずに診察を受けましょう。
肛門科の主な病気
痔(痔核・裂肛・痔ろう)
痔は大きく「痔核(イボ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔ろう(あな痔)」の3つに分類されます。
「痔核(イボ痔)」
肛門を閉じる役割がある静脈叢という部位が腫れた状態をさします。
歯状線という直腸と肛門の境目よりも内側に出来る「内痔核」や肛門側に出来る「外痔核」があります。
「裂肛(切れ痔)」
排便や下痢などが原因で肛門が切れた状態です。痛みや出血、かゆみなどがあります。
切れ痔を繰り返し放置すると肛門狭窄になり、痛みがさらに強くなる恐れがあります。
「痔ろう(あな痔)」
歯状線のくぼみから細菌が入り、中で炎症を起こし膿が溜まります。その膿が出た後に残る肛門内部に通じる管のことを「痔ろう」といいます。
痔核の治療では基本的に生活習慣の見直しや薬物療法を行い、症状によっては外科手術(結紮切除術)を行います。
また、ジオン注射という痔核に流れ込む血液量を減らし止血することができる薬剤を、内痔核に注入して痔核を癒着させ、痔核の脱出を防ぐ方法もあります。
血栓性外痔核
血のかたまり(血栓)が痔核に出来たもので、直腸と肛門の境目である歯状線よりも肛門側に出来るものを「血栓性外痔核」といいます。
急に腫れて痛むことが多く、痛みで気づかれる方がほとんどです。
原因は、長時間の座位、肛門周囲の冷え、長時間排便で強いいきみをすることで、痔核の血流が悪くなり血栓が出来てしまいます。
治療法として、薬物治療や血栓を除去する手術などがあります。
血栓が小さいものや軽い症状の場合は吸収されるものがほとんどですので薬物治療を行います。血栓が大きいもので強い痛みがある場合、取り除く手術を行います。
嵌頓(かんとん)痔核
痔核が脱肛し、肛門括約筋で締め付けられることで、血流障害を起こし痔核全体に血栓を多数形成してしまいます。全体が腫れあがり、かなりの痛みや出血を伴い、症状が悪化すると排便や排尿ができなくなることもあります。
治療法として、鎮痛剤や軟膏や坐薬を用いて腫れを改善していきます。
脱肛を改善し腫れがなくなった場合でも再び脱肛する可能性がありますので根治しなければなりません。
肛門周囲膿瘍
肛門周囲にある管に細菌が入り込み、腫瘍ができる疾患です。
腫瘍の場所や大きさによって痛みや症状の強さが異なり、小さめの膿瘍は痛み、発赤、腫脹、発熱の症状があげられます。大きな膿瘍は強い鈍痛、倦怠感、発熱の症状が現れます。
治療は必ず切開排膿をする必要があります。また、切開排膿後の管やしこりが「痔ろう」とよばれる肛門疾患で、痔ろう化した場合は痔ろうに適した根治療法を行っていきます。
肛門周囲炎
肛門の周囲にかぶれや湿疹が起こります。症状は痒み、痛み、湿疹部位の発熱が挙げられます。
治療には、軟膏などの塗薬の処方をしますが、おしりの衛生を保つことがとても大切です。とはいえ、おしりの洗いすぎや拭きすぎなどで悪化しないように注意が必要になります。
肛門ポリープ
直腸と肛門の境目にある歯状線が排便時に刺激を受けて肥大化しポリープが出来ます。
便通異常(下痢や便秘)や歯状線の炎症などにより引き起こされるといわれています。
ポリープが肥大化することで排便時の脱出をくりかえし、それに伴い痛みや出血が起こります。治療では、外科手術で切除します。ほかの肛門疾患がある方は同時に別の症例の根治療法を行う必要があります。
膿皮症
膿皮症とは、肛門周囲の皮下が慢性的に化膿する疾患です。
細菌の感染によって炎症を起こし、痛み、腫れ、しこりなどの症状を繰り返してしまうことから、痔ろうが合併するケースもあります。切開排膿で治療する必要があり、痔ろうがある場合には一緒に治療を行います。
直腸脱
直腸を支える骨盤底の筋力や肛門括約筋が加齢や出産などで弱くなることなどが原因で肛門から直腸が脱出してしまいます。
初期では排便時での脱出のみですが、悪化すると立ち上がるだけでも脱出したり、脱出で直腸がこすれて出血することもあります。
治療には、経肛門的、経腹的などの外科手術を行う必要があります。
尖圭(せんけい)コンジローマ
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって皮膚が角化し、肛門周囲や会陰などの陰部に大きさや形がバラバラなイボが多発します。大きくなるとカリフラワーや鳥のトサカの様なイボができます。痛みや痒みがほぼないため、発病に気づかない方も多くいます。
肛門性交などによる性行為感染症であり、粘膜の接触で体内にウイルスが入り感染します。
治療には、外用薬と切除手術、または焼灼を行います。
便秘症
便秘には大きく分けると下記に分けられます。
大腸や直腸の働きが乱れると起こる「機能性便秘」
腸管の物理的なものによって便通障害が起こる「器質性便秘」
全身疾患が原因で腸管の働きが弱くなり起こる「症候性便秘」
薬による副作用で起こる「薬剤性便秘」
があります。
便秘の原因がわからずに便秘薬を飲むのはとても危険です。
また、便秘の症状でも違う疾患の可能性もありますので便秘外来を受診することをお勧めします。